緊急災害支援


害虫駆除作業の環境への配慮につきまして

害虫駆除の専門家チームの第一陣が被災地(気仙沼市・陸前高田市)に初めて入ったのは、
4月の中頃でした。その頃の東北はまだまだ気温が低く、最高気温も10℃を下回っていたため、
幸いハエ(成虫)の発生はほとんどみられませんでした。
しかし、沿岸部に建設された巨大な冷凍倉庫や水産加工工場内には
数百から数千トンという大量の腐敗魚類が堆積しているところがいくつもあり、
酷い地域では数十万平方メートルに渡り腐敗魚類が散乱している状況でした。
散乱している腐敗魚類を持ち上げると、そこには今まで見たことのないおびただしい数のハエの幼虫、
つまりウジが動き回っていました。
また、いたるところで蚊の発生場所となりうる水たまりもありました。
つまり、気温の上昇とともにハエや蚊の大発生が起こることを、
誰でも予想できる劣悪な状況だったのです。
しかし、各市町村の自治体では震災に伴う膨大な業務の中で、早急な対応は困難な状況でした。

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NICCOは、害虫の駆除作業にあたっては、環境へ配慮し以下の方法で取り組みを進めています。


 殺虫剤による害虫駆除の選択
環境への配慮を考えると殺虫剤による害虫駆除はリスクを伴います。
今回の殺虫剤の使用による防疫活動については
環境汚染や人体へのリスクを考えると賛否両論あるかもしれません。
"天然物で殺虫できなかったのか?" "腐敗魚類を回収すればいいのではないか?"
 "腐敗魚類を天日干しにすればウジは死ぬ"こういった意見をいただいているのも確かです。
しかし、実際の現地の状況は想像以上の悲惨さであり、
時間的にも物理的にもこのような方法では到底対処できない状況でした。
環境配慮にだけ注力し防除作業を行うと、街は大量の害虫に埋め尽くされ、疫病の蔓延、
ハエが飛び交う不快な生活環境を招く恐れがあると考えました。
そのため、対応には即効性、残効性、高い殺虫効果が必要と考え、
ピンポイントでの殺虫剤を用いた防疫活動を選択しました。
ただし、害虫の駆除作業にあたってはリスクベネフィットに基づき、
防除効果だけでなく環境配慮を最大限考慮した形で取り組みを進めており、
同時に腐敗魚類回収の必要性も各市町村の担当者へ促しています。

 駆除作業の流れ
駆除作業は必要な箇所に必要な量だけ、薬剤を散布する形で進めることで
環境への配慮を行っています。
まず専門家による害虫発生状況調査を実施し、発生源を探してから、
そこへ薬事法で定められた用法・用量の殺虫をピンポイントで処理します。
処理も空間噴霧ではなく瓦礫や腐敗魚類などの発生源への直接散布ですので、
極力ドリフト(飛散)の問題を考慮した散布方法で作業にあたっています。
発生源処理の主な対象は、成虫になって飛来する前の幼虫です。
定期的に殺虫作業を実施するのではなく、処理後も調査を続け、必要であれば追加処理を実施します。

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 使用薬剤について
使用している薬剤は、専門家の意見を参考に、できるだけ人畜や魚類、鳥類に対して
安全なものを選択しています。
使用している薬剤の中心は「レナトップ乳剤」で、防疫作業を実施するポイント周辺で人が
活動していない箇所に関しては、一部安価な「低臭性SV乳剤」を使用しています。
また、カモメも多くのウジやハエを食べに来ていることを確認したことから、
こういった場面でも鳥類に対して影響の少ない「レナトップ乳剤」を選択するようにしています。
蚊の幼虫ボウフラに対しては「スミラブ粒剤」という幼虫の脱皮を阻害するIGR剤を使用しています。
人畜や鳥類は脱皮しませんので非常に安全性の高い薬剤です。
例えば、「レナトップ乳剤」の殺虫成分であるエトフェンプロックスの急性経口毒性
(誤って飲み込んだ場合の毒性)は、LD50=11、900mg/kgであり、
これは食塩の急性経口毒性3、500mg/kgより安全な数値です(数値が高いほど安全です)。
また、残留性も低いものを使用しており、何年も薬剤が残留することはないため長期間にわたり
土壌を汚染するものではありません。
駆除に先だって、必ず住民や市町村担当者にお知らせと説明を行い、
作業の了解と周知を心掛けています。

 防疫作業員について
殺虫剤・散布機器類の安全な使用や効果的な作業を考えると、薬剤や害虫に関する専門知識のあるプロによる防疫作業が最良と考えました。そこで、日本で唯一の防疫専門業者団体である「社団法人日本ペストコントロール協会」と業務提携し、岩手県や宮城県からだけではなく、全国からも会員に駆けつけていただき作業にあたっています。
社団法人日本ペストコントロール協会 http://www.pestcontrol.or.jp/

 防護服の着用について
薬剤散布は全身を覆うことのできる防護服(タイベック)、防毒マスク、ゴーグル、グローブを着用して作業にあたります。これは薬剤から身を守るためだけでなく、瓦礫などに積もった泥やホコリ、臭いが大変酷い状況のためです。リスク管理としてもできる限り最良の服装で作業にあたっています。