
9月17日(金)にムザファルガール県の知事(District Coordination Officer)と協議を行い、支援対象地をガズィ・ガート(Ghazi Ghaat)郡に決定することができました。県庁のデータによれば、住民の被災率は100%です。しかし、支援が集中している地域からは少しはずれた位置にあるため、今まで組織的な支援はまったく得られていませんでした。農業が主体の地域ですが、被災者は皆さん家や家財道具をなくし、小麦の蓄えを失い、収穫前の米や綿花は全滅、家畜も半数は失い、場合によっては家族を亡くされた方もおられます。井戸水が汚染されて、多くの子供が下痢や皮膚病にかかっていますが、街の病院に行くための蓄えも失っているのです。「もし少しでも助けてくれたら、あなたへの祝福を、生涯神に祈ります」と語った被災者もいました。
現在は一日も早く支援を開始できるよう、物資の調達と輸送に全力をあげています。すでに現地提携団体Safe Winds Organizationから、9人のボランティアが村々に派遣されて、被災者への聞き取りと名簿作りを進めてくれています。
テント、衛生用品等の支援物資の調達は、パンジャブ州の州都ラホールで行っています。ラホールはNICCOが仮事務所を構えるムルタンから350Kmほど北東に位置しており、600万人以上の人口を有する近代的な大都会です。ここにはSafe Windsの本部があり、今回は彼らの協力を得て効率的に物資を調達することができました。
Safe Windsはラホール商工会議所の役員等を務めるビジネス界のリーダー達が設立した団体で、関係者は皆、我々が日本から支援に来たことに、またジャパン・プラットフォームを通じて日本の市民が多額の資金を準備してくれたことに、大きな感謝の意を示してくれました。そして何人かの方からは、ぜひNICCOの活動に賛同して、ぜひ会員として入会したいとの申し出まで頂きました。また日本人がここまでしてくれているからには、自分達も出来ることはしなければと、今回はSafe Windsの役員のアクバル氏が、自ら各業者を一緒に回って、交渉にあたってくれました。
パキスタンでの物資購入は、外国人であることが相手に伝わると、値段を釣り上げられてしまうのが常ですが、今回は商工会議所の役員も務めるアクバル氏が、石けん1つ、歯磨き粉1本に至るまで、1ルピーでも他の業者より高いものがあると負けさせて、全てパキスタン人が購入したとしても適正な、最安値で購入できるように交渉してくれました。パキスタン商人の交渉術を間近で見ることができ、私も勉強させてもらいました。
今回ラホールでビジネス界の人々のサポートを受けながら仕事をして強く感じたことは、アジアの市民社会の成長です。新興国と言われる国々や東南アジアは言うに及ばず、ここパキスタンでも中間層が形成され、成功したビジネスマン達が、市民として社会に貢献しようとしています。アジアの被災地では、日本のNGOが現場で孤軍奮闘しなくとも、その国の市民社会組織と対等な協力関係を築いて、一緒に支援をすることができる、そういう時代が来ていると感じました。実は日本の他のNGOから、南アジアでのそのような動きについては以前から聞いていたのですが、今回パキスタンに来て、遅まきながらやっと実感することができた訳です。
ビジネスや経済成長では、各国の追い上げを受けて日本社会は自信を喪失しているかに見えますが、市民が様々な組織(NGO)を作り、資金を集めて、国内の様々な課題のみならず、海外の災害支援や貧困削減にまで取り組むという点では、日本社会にはまだまだ一日の長があります。これからの世界では、市民社会による支援のノウハウを各国のNGOと共有して、日本のNGOがアジアの市民社会の成長に貢献して行く、またアジアの市民からも資金的なサポートを受けながら日本のNGOも成長して行く、そんな時代の潮流がすでにアジアで流れ出していることを予感したラホール滞在でした。
9月22日
折居徳正
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