
NICCOがジャパン・プラットフォームの一員として取り組んでいる、パキスタン水害被災者支援。
2011年8月後半から続く豪雨による水害被災者支援として、シンド州にて、蚊帳・衛生キットなどの
緊急支援物資の配布、配水車による水の配水、日本人医師による巡回診療などに取り組んできました。
5回にわけて、現地派遣の医師からのレポートをお届けします。
2011年12月5日 報告者:塚本 勝之 医師
今回は
レポート(4)で触れた衛生教育および啓発について話したいと思います。
2011年のパキスタン洪水災害支援の活動内容には、
直接的および間接的な被災者への衛生教育は含まれていません。
しかし今まで述べてきた栄養問題、安全な水の確保および身の回りの衛生を考えてい
く上では今後、
教育、啓発のノウハウが必要となってきます。
ここでは今後の被災者支援を見据えて、現地NGOスタッフに実施した
研修(トレーニング)と仕事に対する啓発を例にとってお話します。
みなさんは教育とトレーニングの違いをご存知ですか。
またその中に直接的、間接的アプローチがあることご存知ですか。
簡単に言うと「教育」とは個人の活動の選択肢を広めるために知識、技術を提供すること、
「トレーニング」とは個人の能力の中で欠けている部分を補うため知識、技術を提供することです。
また直接的アプローチとはそれを必要としている個人または団体を対象にし、直接介入することであり、
間接的アプローチとはそれを必要としている個人または団体に関わる人
(ヘルスワーカーや教師など)を対象にし、一段階おいて介入することです。
異論はあると思いますが自分は上記のように認識しています。
災害地だけでなく一般のプロジェクトでもこの点を考慮して教育、啓発の支援をしていかなければなりません。
また教育やトレーニングではスタート地点が異なるアプローチがあります。
1つめは「一般論→評価→実施→具体的な経験→一般論化」というサイクルで表され伝統的な方法になります。
つまり机上で学び、考え、実際にやってみて、具体的な知識・技術にするものです。
2つ目は「具体的な経験→評価→抽象的具体化→積極的な実施→具体的な経験」のサイクルで表されます。
これは自分の具体的な経験をもとに、学び、噛み砕いた後、もう一度やってみて知識・技術を得る方法です。
2つ目はよく成人教育に用いられます。
最初に一般論を提供しても個々の成人の経験が一般論を否定することが多いからです。
また2つ目は具体的な経験が最初に必要なため、
初めのステップとしてケーススタディやグループディスカッションを用いることも多いです。
さて、なにやらややこしい話になってしまいました。
こちらパキスタンで現地NGOスタッフに実施したトレーニングを例に話を進めます。
さて今回のトレーニングの内容は保健衛生に関してのものではありません。
今後の現地NGOの活動を見据えて、プロジェクトの立案・計画を題材にしました。
手法はプロジェクトサイクルマネジメント (PCM、事業管理)の実施と
ログフレームワーク(プロジェクト概要を表した表)を使用しました。
しかしここでは手法については触れません。まず最初に簡単な手法の説明と
「小児の栄養不良」という問題提起をし、すぐにワークショップに入りました。
ワークショップですので講義などは一切なく、
立ったままでグループ内で議論しながらカードに記入したり、それを壁に貼ったりの作業が続きます。
ここで自分の「小児の栄養不良」に対する問題意識、また他人との意識の違いを経験します。
そして議論の末に問題の所在地および解決方法をグループで共有します。
それを基にプロジェクトの目的や活動内容、活動期間などグループ内での同意のもと計画書に落していきます。
バーチャルではありますが前述した2つ目のトレーニング手法になります。
このような参加型のトレーニングはフィールドでの保健衛生の教育および啓発にも適応させることが出来ます。
興味のある方は調べてみるのもいいかと思います。
実は今までの報告書でもケーススタディを使って栄養に関すること水の安全に関することを述べてきました。
最初に実例を出しその後一般論を説明してきました。
自分は教育・トレーニング方法の移転もひとつの技術支援のアプローチだと考えます。
つまり結局すべての支援の礎は教育およびトレーニングに戻ってくるのではないでしょうか。