
NICCOがジャパン・プラットフォームの一員として取り組んでいる、パキスタン水害被災者支援。
2011年8月後半から続く豪雨による水害被災者支援として、シンド州にて、蚊帳・衛生キットなどの
緊急支援物資の配布、配水車による水の配水、日本人医師による巡回診療などに取り組んできました。
5回にわけて、現地派遣の医師からのレポートをお届けします。
2011年12月5日 報告者:塚本 勝之 医師

12月に入りました。宿泊場所のハイデラバードや支援拠点のミルプールハースも夜間は羽織るものがないと寒いです。
今回は小児の栄養について考えます。
こちらでモバイルクリニックを巡回してすぐに思ったことがあります。クリニックの入口で村の責任者のような人たちが出迎えてくれます。その時は待っている患者のほとんどが男性です。女児、女性はほんの一握りです。またあるときは女性ばかりです。もちろん病院のように診察場所に壁やカーテンがあるわけではありませんのでおのずと男女別々になるのだと思います。
それでは順番はどうなっているのでしょうか。
もし男性が先で女性が後になり診療時間が足りなくなれば自然と女性患者が少なくなってしまいます。
家事や子供の世話もあるでしょうから。またこれが女性だけの問題ではありません。
乳幼児は母親が連れてきます。男性が連れてくることもあります。
しかしはたして男性が子供のそれまでの状況を把握出来ているのでしょうか。
災害には多々の外傷、疾病が絡んできます。長期の疲弊した環境の中では取り分け感染症が問題視されます。
いわゆる「アウトブレイク」対策です。呼吸器感染症、下痢症などの患者が一地区で急に増加し、
それが他の地域にまで飛び火するような状態です。
死者も多数出ることがありますので注意しなければなりません。しかしこれだけ注意していればよいのでしょうか。

乳幼児、小児には気づかれない疾患があります。疾患と思ってないのかもしれません。それが低栄養です。いわゆる栄養失調です。これはカロリーの低摂取だけではなくビタミンや鉄、亜鉛などの微量元素の低摂取も含まれます。低栄養状態では特に子供からの特別な症状の訴えはありません。「おなかが減った」ぐらいです。また母親の方は子供がやせていても周りの子供もやせているのであまり危機感はありません。髪の色素も足りなく、赤や金色に変わっていてもです。子供は普通に遊んでいます。静かなる疾病です。
しかし災害のような特殊な状況では異なります。前述した「アウトブレイク」のような状態です。
子供は限られた摂取カロリーを成長や日常活動に費やしています。
つまりエネルギーを日常活動に費やし、成長はそこそこの極限状態にいると思ってください。
ここに感染症が入ってくると今までのバランスが崩れてしまいます。
外部からの異物である細菌やウイルスなどに対抗するためにカロリーを使わなくてはなりません。
足りなければカロリー補給をしなければなりません。しかし災害後の状況では食料調達もままなりません。
そこで体は筋肉などを分解しカロリーにしてそれを細菌、ウイルス対策に使用します。
するとますます体がやせていきます。そして最後には対抗できなくなります。
これが災害時の子供の特殊な状態です。
つまり自分の言いたいことは、災害時、災害後の疾病対策は診療だけではなく、
予防接種や身の回りの衛生の啓発だけでもなく、子供の栄養状態を改善しておくことも必要なのです。
栄養状態の改善は言わば疾病対策の底上げなのです。
子供の栄養状態の把握、定期的な測定、栄養不良の診断および改善は、
医療従事者以外にもできることです。体重を量り、身長を測ることは誰にでも出来ます。
以前も言いましたが、医療従事者だけが疾患を予防できると言うわけではありません。
すべての人にその可能性があります。皆さんも医療を医療従事者だけに任せておかず、
自分も医療に携わってはいかがでしょうか。また報告します。