■心理社会的ケア
第1期事業のモバイル・クリニック(巡回診療)で、被災した子どもたちが友人や家族、家を失った喪失感や、被災後の不自由な屋外での避難生活によって、精神的な傷(トラウマ)を抱えていることが懸念されました。
一般的に、震災のように大きな災害で受けたトラウマは、多くの人が心に受け入れることはできず、無意識の中に押さえ込もうとします。そして、後にそれが歪んだ形で発現してPTSD(心的外傷後ストレス障害)になると言われています。
NICCOは、その状況を改善するため、特に交通アクセスが悪くて支援が届きにくく、復興にも時間がかかるものと想定される3つの地域の小学校を選び、その子どもたち(小学4年 - 6年)に対して、心理社会的ケアプログラムを1カ月間行いました。
心理社会的ケアは、まわりの人々が自分を受け入れてくれる安全な場で、地震の記憶を「ことば」以外の方法 - 「描画」や「粘土」、「演劇」などで表現することで、その記憶を受容できるようにするもので、これにより、PTSDの発症の可能性を軽減し、予防することができます。
プログラム実施対象校は、次の3校です。
・リマ・コトタ・ティムール郡第8小学校(SDN08)
・リマ・コトタ・ティムール郡第22小学校(SDN22)
・リマ・コトタ・ティムール郡第24小学校(SDN24)
計10回のセッションに参加した子どもたちは、3校合計で延べ700人以上に上ります。
| No |
実施内容 |
SDN08 |
SDN22 |
SDN24 |
| 1 |
オリエンテーション |
19 |
21 |
16 |
| 2 |
描画 |
22 |
23 |
26 |
| 3 |
粘土細工(個人製作) |
24 |
22 |
20 |
| 4 |
粘土細工(共同製作) |
26 |
20 |
31 |
| 5 |
グループ競技 |
23 |
23 |
27 |
| 6 |
演劇練習1回目 |
25 |
16 |
29 |
| 7 |
演劇練習2回目 |
26 |
20 |
28 |
| 8 |
演劇公演リハーサル |
26 |
16 |
28 |
| 9 |
演劇公演 |
26 |
19 |
28 |
| 10 |
終了式 |
27 |
21 |
29 |
|
合計 |
245 |
201 |
262 |
支援活動実施中は、雨のために舗装されていない道路が徒歩以外の手段では通行不能となり、山林の中を片道約1時間半かけて徒歩で移動し学校に向かう日があるなど、困難も伴いました。


(写真左)第24小学校への道は、車両が通行できない悪路を抜けなければならず、学校への訪問も一苦労。
(写真右)粘土細工では、屋外で家族だんらんやテレビを見ている様子など、地震を想起させる作品も見られた。
このプログラムの開始当初は、声をかけても無表情な子どもたちも見られましたが、そんな子も、演劇練習のセッションが始まる頃には、笑顔がもどってきました。
演劇練習では、セリフを覚えていなかった子どもも、リハーサルまでには覚え、演劇公演当日は、多くの観客の前で堂々とした演技をみせてくれました。
中には、緊張のあまりか、セリフを度忘れしてしまう子どももいましたが、そんな場合でも、セリフを他の子どもたちが教え合い、演劇公演は成功裏に終了させることができました。
公演当日は、各小学校の先生や生徒たちの他、地域住民等も観客として訪れました。公演は2回、第8小学校と第22小学校の合同公演と、第24小学校の単独公演を行いましたが、両公演とも、大人60名程度、子どもたちを含めると150名程度の観客数。特に第24小学校の公演会場は、道路が寸断され、バイクや徒歩でしか移動できない状況の中で、多くの地元の方々が来場してくれました。さらに、来賓として、村長や集落長も駆けつけ、公演は両日とも、地域集落一帯でのイベントとして盛り上げることができました。


(写真左)演劇公演で地震の恐怖について迫真の演技をする子どもたち。
(写真右)屋外での演劇公演にもかかわらず、多数の方が来場。会場には、「今回の支援がなければ早期復旧はあり得なかった。ありがとう」と書かれた垂れ幕が住民によって用意され設置された。
第24小学校の公演終了後、校長先生に話を伺いました。
「子どもたちは、地震発生直後、地震のことを頭で考えていても状況をうまく飲み込めていない様子でした。しかし、今回の演劇公演では、子どもたちが地震の経験を受け入れて、その上で演劇の中で表現できている様子がひしひしと伝わりました。そして、公演当日は、多くの地域住民の参加も相まって、非常にあたたかな雰囲気になり、大変良いものでした。
心理社会的ケアのセッションが進むにつれ、学校に登校する子どもが増え、子どもたちの登校意欲が向上していくように感じられました。さらに学校の先生も、セッションに関わるようになり、だんだん、子どもたちへの接し方を学ぶようになったように思います。NICCOのプログラムが終了した後も、自分たちで子どもたちのケアを継続させたいです。」
地震で怖い体験をした子どもたちですが、きっと、これからは、先生や地域のやさしい目で見守られながら、自分たちで、地震の経験を糧にして、前進してくれることでしょう。
★スマトラ島地震緊急支援活動の報告については、是非こちらもご覧ください。
・
第1期活動報告
・
第2期活動報告:概要
・
第2期活動報告:シェルター建設支援
・
第2期活動報告:学校への備品配給