■シェルター建設支援

地震から1カ月経過後の11月頃には、被災住民たちは、木造の仮の住まいを自力で建てる者も出てきました。しかし、一時的な住まいとはいえ、自力で建設された建物の多くは、構造上問題があり、地震が再発すれば倒壊するおそれが高いものでした。 一方で、テント住まいのものもまだまだ多く、本格的な雨季となる前に、風雨を凌げる一時的な住まいを確保するための支援も求められました。
このような状況の中で、NICCOでは、被災者の一時的な住まいや地区集会所を確保するために、現地に日本人の建築専門家と大工を派遣し、地震でも壊れにくい木造建築の構造に関する技術・知識を被災大工・住民に伝達しながら、地域活動の拠点となる地区集会所の建設に取り組みました。
具体的な活動は、次のとおりです。
1) 地区集会所の設計
日本人建築専門家を中心に、地震から1カ月後というまだ混乱が続く中で、入手可能な資材(木材・トタン)を調査し、迅速な建設が可能で、構造上、壊れにくい木造建築物として地区集会所を設計しました。
その木造建築の構造は、日本の在来木造工法の基礎的技術に基づき、設計されました。
2)説明会の実施
下記3)以降の実習の説明を行うとともに、日本人建築専門家が在来木造工法の基本的な考え方について模型を使って広く住民の方に教えるため、12集落各所をまわり、説明会を開きました。
(写真左)説明会の様子。同じ場所でがれき除去ツールの配布を行うJENと合同開催。
(写真右)建築の知識に乏しい住民に対して、建設する集会所についてわかりやすく説明するために、日本人建築専門家が制作した模型。
3)日本人大工による現地大工への技術移転
上記1)の設計に基づき、地区集会所の建設を通して、地震でも壊れにくい木造建築の構造に関する技術・知識について、日本人大工が現地大工に実習形式で教えました。

(写真上)日本人大工により、現地大工の実技指導を行う。
(写真右)「筋交い」の入れ方について、日本人大工が講義を交えながら実習。 |  |
4)現地大工による現地住民への技術移転上記3)の実習終了後、優秀だった現地大工を講師として選定し、今度は、現地大工から住民たちに、地震でも壊れにくい木造建築に関する技術・知識について、実習形式で教えました。
この実習の間、日本人建築家・日本人大工、そして建築を専攻していたNICCOスタッフが実習場所を毎日巡回し、進捗状況を確認するとともに、必要に応じて、補足的な指導を行いました。
(写真左)現地大工が集会所の建設を通して、住民に対して修得した技術を実技指導。
5)防災ワークショップの実施
地震対策は、ハード対策とソフト対策が両輪となって行うことが重要です。以上の2) - 4)では、地震に壊れにくい建物を建設する技術 - いわばハードの対策について教えるものですが、これに加えて、実習参加者に対して、地震の被害を免れ、あるいは発生後に被害を軽減させるために必要な措置について伝えるためのワークショップを実施しました。
(写真右)竣工後の集会所に住民を集め、防災ワークショップを実施。村長も参加し、進んで質問をなさって、理解を深めていました。
6)地区集会所の建設
以上の3)と4)の実習を12集落で行い、各集落1棟ずつ地区集会所を建設しました。なお、建設にあたっては、廃材を活用するなど、環境に配慮し、資源の有効活用を図りました。
7)建設資材の配布
現地住民による移転技術を用いた木造住宅の建設を支援するため、上記の実習に一定回数以上参加した大工・住民に対して、建設資材(トタン・木材)を配布しました。

(写真左)完成した集会所を前に記念撮影。
(写真右)集会所は、活用可能な廃材量などから、集落によってデザインをアレンジ。ここでは、子どもたちがペンキを塗り、地域全体で愛着をもって仕上げた。完成後、その集会所の前で住民に木材を配布した。
これらの活動は、熱帯地方特有の一時的な激しい雨で中断されたりすることもありましたが、被災住民たちは、自らが進んで、比較的雨の少ない午前早くから建設実習に取り組んだり、休日中に取り組んだりするなど、わたしたちNICCOとともに一丸となって、事業の早期完了に向けて取り組んでくださいました。
その結果、約1カ月間で、
・地区集会所の建設:計12集落(各集落1棟)
・現地大工への実習(WS):計40名
・現地住民への実習(WS):計403名
・建設資材(トタン・木材)の配布:大工計36名、大工以外計291名
の支援を果たすことができました。
地区集会所は、竣工後まもなく、集落長の執務場所や、救援物資の倉庫など、地域活動の拠点として使用されており、さっそく地域復興の一助となっています。
また、実習に参加した大工には、実習終了後すぐに修得した技術を用いて、市場内の店舗再建を進めている方がいることを確認しています。この大工にインタビューしたところ、今回の実習で学んだ技術が地震に対して有効であることを認識しており、今後の建設でも活用していく意志を示してくださいました。
このように、地震発生から2カ月を経ないうちに建設した集会所、そしてその建設を通して実施した地元大工・住民への技術移転は、終了直後から、地元住民の自助努力による復興への取り組みに役立っています。
(写真左)竣工後まもなく机・備品が設置され、集落長の執務場所として使用。地域の活動の拠点となった。
(写真右)実習終了後、参加大工が会得した技術を用いて店舗再建を実施しており、実習の成果を確認した。