ヨルダン


ふれあいの中で心の傷を乗り越えよう!

house.jpg闇を包む静寂に轟く爆撃の音、絶え間ない銃撃戦、大切な家族の死・・・イラクで今も続く戦争は、たくさんの子どもたちの心に深い傷を残しています。

普段は明るく振舞っていても、ふとしたきっかけで過去の記憶を思い起こし、恐怖にうずくまる子どもたち。この心の傷は忘れることによって、癒されるものではありません。そしてその心の傷は放っておくと、PTSD(心的外傷後ストレス障害)という重い障害につながることも少なくありません。

そこでNICCOは、精神科医であり、心理社会的ケアの専門家である桑山紀彦医師の監修を頂き、絵画や音楽、演劇を通した心理社会的ケアを実施するで、彼らが楽しみながら過去の記憶と向き合い、受け入れることにより、PTSDを予防したり克服するための手助けをしています。

■なぜ、支援を行っているの?
map.jpg2003年のイラク戦争以降、激化する戦闘と悪化する治安から逃れるため、200万人を超えるイラク人がヨルダン、シリアをはじめとする周辺国に避難していると言われています。そのうち約50から75万人の避難民がヨルダンにいると推計され、多くは労働許可を持たず、働く事ができないために貧しい生活を強いられています。

戦争被害による家族を失った悲しみ、ストレスによる家庭崩壊、祖国に帰れない寂しさや苛立ち、未来の見えない不安などにより、生きる喜びを失う人々も多くいます。戦争は多くのイラク避難民の心の中にトラウマとして大きな傷を与えました。

支援をするにもイラク避難民だけの支援では、イラク人が幸せに生きていく事ができないだけでなく、同じ土地で生活をするヨルダン人も幸せに生きていくことができません。NICCOはイラク人とヨルダン人、お互いに理解を深め、信頼を築くお手伝いをしています。

■どこで行っているの?

ヨルダンのザルカ市(首都アンマンから北東へ20km)で活動しています。
ザルカ市は生活水準が低く、貧困地区に指定されており、イラク避難民も多く暮らしています。(左記地図を参照)

■どんな支援をしているの?
1.心理社会的ケア
NICCOは、イラク・ヨルダン両国の子どもを対象とした心理社会的ケアを行っています。
イラク人の子どもに対しては戦争被害によるトラウマを解消し、ヨルダン人の子どもに対してはイラク避難民を受け入れる側としてイラク人の現状を理解するためです。
そして国籍を越えて信頼を築き、共に生きることを目的としています。

■第一プログラム

class2.jpgこのプログラムは他の年齢と比べてケアが一番見落とされがちな10歳―15歳のイラク人とヨルダン人を主な対象としています。絵画やスポーツ、演劇を通じて心理的な不安を吐き出し、お互いの理解を深めると共に生きることを目的として取り組んでいます。

しかし、ただ絵を描いたり、劇をすればいいものではありません。

まず、心理テストとして描画セッションを行い、心理状態を表現します。そして、そのトラウマと向き合うべく、それぞれの抱える不安や辛い生活状況について話し合い、そこからの意見を取り入れて演劇の台本をつくります。

皆で舞台を創り上げる過程で過去の傷をしっかり受け止め、お互いを理解し合うことを目的としています。また、子どもたちの舞台を家族や近隣の人たちに見てもらうことで絆を深めることにもつながっています。

ほら、プログラムを終えた子どもたちに笑顔が戻ってきました。

■第二プログラム

2nd_dance.jpgこのプログラムは、第一プログラムを終了した子どもたちやその親類、友人を対象にしています。
演劇のテーマは「争いと平和」、「コミュニティの調和」、「恨みやねたみ」、「和解」、「地域のネットワーク」など。
この演劇は、コミュニティの人たちに観てもらう本格的な公演で、本番に向けて集中的に練習することでさらに自信を高める効果にも期待します。公演後には、「振り返りのワークショップ」を行い、演劇で問いかけたことを深めつつ、眠っていたトラウマを刺激し、集団的心理療法を行う機会を設けています。舞台を創り上げた子どもたちは自信に満ちたイキイキと輝いた表情を見せてくれます。

イラク人とヨルダン人が共同で創り上げる舞台を多くの観客に見てもらうことで、コミュニティの相互理解の土壌を育むことも大きな目標です。


2.カウンセリング
家族を目の前で殺されたり、親の虐待を受けたりなど、グループ活動では対応できない深刻なトラウマを抱えるイラク人をサポートするため、精神科医やソーシャルワーカーによる個別カウンセリングを行っています。

誘拐の恐怖を体験した少年。

彼は毎日塞ぎ込み、自殺したいと考えるようになりました。

また目の前で息子を殺された父親や目の前で殺害を目撃した5歳の少女は、幻覚に悩まされたり、家族を傷つけたり・・・。

戦争の被害は、イラク人の心に深い傷を残しています。彼らが笑顔を取り戻し、前を向いて生きていくためにカウンセリングを重ね、継続的にケアをしています。