平成16年度(2004年度)
事業報告
自 平成16(2004)年4月1日
至 平成17(2005)年3月31日
京都市中京区六角通新町西入西六角町101番地
社団法人 日本国際民間協力会
序文
平成16年度(2004年度)を概観すれば、中東においてイラク情勢の混迷が続きパレスチナ問題の先行きも見えない中で、チェチェンやスペイン等各地でテロが相次いだ一年であった。また一方では、中国やインドが世界経済において無視し得ない地位を占めるに至り、勃興を始めたアジア地域と比して、アフリカの貧困がさらに際立つこととなった一年と言えるであろう。そしてまたこの一年は、日本国内においては新潟県中越地震と台風23号、そして世界的にも未曾有のインド洋大津波等、数多くの自然災害に見舞われた1年としても記憶されるであろう。
NICCOの平成16年度は、その前年末に発生したイランにおけるバム地震の救援活動の最後の仕上げとして、被災者にラジオや洗濯機を提供し、4ヶ月に渡った活動を完了してバムより撤退することから始まった。
バムでの緊急支援実施の間も休むことなく、NICCOは流血と激動の続くイラクとパレスチナの間に位置する国ヨルダンにおいて、ヨルダンの人々ために活動する唯一の日本のNGOとして活動を続けた。アラブ世界全体のモデルと成り得るパーマカルチャーに基づいた環境保全型農業の普及をJICAと共に推し進め、日本から土壌、昆虫、養蜂、養鶏、マーケティングの専門家を送り込み、有機オリーブ栽培の支援1年目にして高品質のエキストラ・ヴァージン・オリーブオイルを産出するに至った。
同じく中東に位置するアフガニスタンにおいては、3年目に入ったヘラート州での植林事業において、2つのモデル地域を確立するに至った。一つ目は、水利事業と組み合わせることにより荒野の開拓村を着実に緑化しつつあるモンゴル系ハザラ族のホジャ・サルボール村、もう一つは内戦で荒廃した果樹園を伝統農法に基づいて再生するヘラート市の西部5村である。加えてアフガニスタンにおいては、孤児の支援を含む教育環境整備事業も、国の将来を担う子ども達のため、休むことなく続けられている。
世界の目がイラク情勢に向けられる中、NICCOはアフガニスタンに対する支援に力を注ぎ続け、隣国イランにおいても活動を続行した。アフガン難民を主たる対象としてIT職業訓練をさらに充実させ、新たにグラフィックとCAD(コンピュータを用いた建築デザイン)のコースを開講、15年9月以来1年半に輩出した卒業生は600名を超え、すでに57名がアフガニスタン及びイラン国内で就職を果たしたと確認されている。
さて、NICCOの活動開始の地東南アジアにおいては、平成元年から活動を続けるベトナムにて、山岳少数民族を対象とする支援の最終段階に入った。15年より開始されたし尿分離型の環境衛生式トイレの建設事業を継続し、前年度までに建築したトイレの追跡調査も実施した結果、住民の85%に及ぶ高いトイレ使用率が確認されている。
これらの既存事業が着実に執行されて行く中で、12月26日、インド洋における地震と大津波が発生、人道的危機であると判断したNICCOは、翌日にはスタッフをスリランカに派遣、仮設住宅の建設支援事業に着手した。
これら5カ国において緊急、復興、開発分野に及ぶ多様な支援活動が可能となったのは、関西を中心に全国に広がる会員、寄付者の方々からの支援に加えて、京都と海外の事務所においてボランティアで働くインターンの若者達の働きがあったことを忘れることはできない。本年度より国際協力NGOとしては日本で初めてとも言われる、日本国内の研修用地を琵琶湖畔に備え、そこで研修を受けた若者達12名が、ヨルダンの荒野からスリランカの密林にまで派遣され、NICCOの活動の一翼を担って活動した。本年度の広報とイベント活動の充実も、これらの若者達自身が企画、運営することにより達成されたものである。
本年度もNICCOは、会員、職員、インターン、ボランティアが結束して持てる力を出し切り、途上国の人々の自立の支援のため、着実な歩みを続けたと言える。
目次
―海外事業―
(☆…新規事業、★…継続事業)
1. パーマカルチャー農園の維持・管理 (ラムドン県)★
2. 国際医療・保健所建設(ラムドン県)☆
1. ヨルダン渓谷北部地域における住民参加型環境保全節水有機農法の普及と普及センターの確立(ジェラシュ県及びバルカ県)☆
1. 教育環境整備(ヘラート市)★
2. 植林と家庭菜園支援(ヘラート州)★
1. 職業訓練(マシャッド市)★
2. バム地震緊急支援(バム市)★
1. インド洋大津波被災者支援(ハンバントタ県)☆
―日本国内事業―
A. 琵琶湖湖西域における自然資源管理と地域活性化を目的とした複合モデルの構築☆
B. 人材育成制度 ★
C. 広報と活動資金の獲得 ★
D. 会員、支援者との交流 ★
E. 他団体との交流と連携 ★
―海外事業―
A1.パーマカルチャー農園の維持・管理と<継続>
【1】対象地区 :ベトナム社会主義共和国ラムドン県ラムハー郡ダンフォン村
【2】総事業費:(直接事業費)2,936,111円+(管理費)263,637円=3,199,748円
【3】助成金合計:1,200,000円(日本経団連自然保護基金)
【4】派遣時期と派遣者名:
平成16年5月16日〜平成16年5月20日
小野 了代(
小野 修(専務理事)*A-2の事業と兼任
平成16年6月15日〜平成16年8月14日
重本 和宏(インターン)*A-2の事業と兼任
平井 寛(インターン)*A-2の事業と兼任
平成16年6月15日〜平成16年10月31日
太田 香織(インターン)*A-2の事業と兼任
平成16年8月13日〜平成16年10月9日
木透 洋子(インターン)*A-2の事業と兼任
【5】事業実施の経緯
事業対象地であるラムドン県ラムハー郡ダンフォン村は、ベトナムの首都ホーチミン市の北東約330km、標高800m〜900mの高原地帯に位置する。気候は熱帯性気候で、5月〜10月が雨季、11月〜4月までが乾季にあたる。かつては豊かな森林に覆われていた地域であったが、ベトナム政府の移民政策により人口が急増して開拓が進み、急速に森林が減少しつつある。
ダンフォン村第5集落は世帯数約130であり、そのうち68世帯が最も貧困な少数民族の一つであるコーホー(K’ho)族である。その他の世帯はベトナムでは80%をしめるキン(Kinh)族とその他の少数民族及びそれらの混血の世帯であり、新たに入植してきた民族のほとんどはキン族がしめる。新入植者の生活も決して豊かではない。住民は農業を生業として生活しているが、コーホー族のように特に貧しい人々は、狭い土地での農業で貧困に苦しんでいる。一方でキン族を中心とする新しい入植者は、次々と森林を農地へと転換し、環境破壊が進んでいる。
平成15年5月にベトナム政府は中部高原地帯4県の少数民族と外国人との接触を禁止する通告を出し、当会が支援を行っているコーホー族も、その対象となった。コーホー族の生活環境の更なる悪化が懸念される。
平成16年度当会はダンフォン村第5集落において、環境教育、し尿分離型トイレの建設及び指導、パーマカルチャー普及の3つの活動を主に行い、環境に対する意識の向上を通して、住民の衛生状況の向上と生活の安定を目指した。
【6】事業内容と成果
1. 環境教育
@し尿分離型トイレとその意義についての講習会(6月30日)
ニャチャン・パスツール研究所よりし尿分離型トイレの専門家を招聘し、トイレ建設対象者(参加者26名)に、し尿分離の仕組みと、地下水汚染防止や、保健・医療面を含めたし尿分離型トイレの有効性についての講習を行った。またトイレ建設を行うワーカー(10名)に対しても、同様に講習を行った。
A尿の利用講習会(7月1日/9月4日)
以前建設したし尿分離型トイレでの寄生虫卵死滅実験結果に基づいて、ニャチャン・パスツール研究所による便の農地還元方法の講習を、トイレ建設対象者(参加者26名)と、以前にトイレを建設した家族(参加者34名)に対して行った。
2. し尿分離型トイレの建設及び指導
@トイレの建設
平成16年6月中旬から8月中旬にかけて、し尿分離型トイレを30基建設した。
Aし尿分離型トイレ使用方法指導
トイレ建設後の平成16年8月中旬から10月中旬までの間、当会調整員が月に2回各家庭を訪問し、平成15年以後に建設したトイレの使用状況の確認と指導を行った。便にかける灰が適切に使用されていないなどといった問題も有ったが、85%の住民が継続してトイレを使用しており、調整員の指導により、同トイレの使用を開始したほとんどの家庭が適切に使用できるようになった。
Bバックドア取り外し指導(9月4日)
このトイレには便槽が2つあり、寄生虫卵の死滅後バックドアを取り外して使用する便槽を切り替える必要がある。しかし、家族数や使用状況によって便槽が一杯になるまでの期間にかなり差があり、また病原体の死滅に予想より長く時間がかかることがわかったため、当会調整員滞在時に実地に指導する事が出来なかった。そのため上記のし尿の利用講習会の際に、バックドアの取り外し方法を同時に説明した。
3. パーマカルチャー普及
@周辺農民の農地における技術指導
雨季の間は農繁期であるため、雨季の終わりごろ(10月)に事業地近隣農家6世帯(15.5ha)の農地を訪問し、マルチ(日覆い)の指導、Aフレームを使用した等高線の計り方、等高線に沿ったグリーンベルトの作成といったパーマカルチャーの手法を、個別に指導した。
A経済的支援
上記6世帯の内、3世帯は当会調整員滞在中に、上記手法を直ちに取り入れ始めたので、その積極性を評価し、転換期における農業収入の減少を経済的に支援する目的で、食用レモングラスや牧草を、グリーンベルトに植える植物として支給した。残りの3世帯も当会調整員帰国後にパーマカルチャーの手法を取り入れることを約束しているため、次回調整員派遣時に、その状況をモニタリングすることになっている。
Bマーキング
平成15年度に拡張した当会のモデルガーデンにおいて、紐を使用した2m四方の囲いを作り、囲いの中の植生の観察及び記録を継続して行っている。パーマカルチャーは複数の植物の間植、混植を行い、多品種の生産を目指す点で単作農業とは手法を異にする。パーマカルチャーになじみのないものにとっては管理が難しいため、囲いの中に植樹した木の成長記録をとり、ガーデンを効率的に管理することを目指している。また、その記録をつけることで、数年後の作物の配置や組み合わせる樹木の構成を考える判断材料とすることができる。
Cマルチ
一年を通して有機物が地表を覆い、雨や風による浸食や雑草の混入を防ぎ、肥沃な土を育てている。
Dマメ科の植物など種まき
土壌の肥沃化に必要な窒素を固定するインゲンなどのマメ科の植物を6〜7月に播種し育てた。
E苗床の管理
平成16年1月2月頃の強風により、ガーデン内のレギュームなどマメ科の高木が数本倒れたため、苗床で育てたマメ科の低木をガーデン内に植え直した。
【7】今後の展望と課題
トイレ建設を始める前に、ダンフォン村においてトイレ事情の調査を行った。調査対象者のうち98%の村民が、トイレを所有していなかった。所有していない人の91%は自分の家の庭先で、4%は川をトイレ代わりに使っており、環境及び衛生上深刻な問題となっている。また14年に弊会が行った検便調査では、住民の85%以上が回虫、鈎虫等の何らかの寄生虫卵を保持していた。今回ニャチャン・パスツール研究所の調査により、長ければ数年生き続ける回虫・鈎虫卵が、弊会が設置したトイレの便槽内では約10ヶ月間で、完全に死滅することが証明されている。し尿分離型トイレの使用によって、住民の衛生環境向上に大いに役立つことが期待される。
し尿分離型トイレのもう一つの期待される効果は、分離した尿の肥料としての利用が可能となることである。化学肥料による土壌の荒廃及び農民の身体への悪影響を防ぐことができ、また化学肥料さえ購入できない貧困農家に対しては、尿を肥料として利用することによって、金銭的負担の軽減が可能になると考えられる。現地農民に対するパーマカルチャーの指導とともに有機肥料としてのし尿分離型トイレの尿の利用方法も、具体的に成果が上がるよう指導を行っていきたい。
A2.国際医療・保健所建設(ラムドン県ラムハー郡)<新規>
【1】対象地区:ベトナム社会主義共和国ラムドン県ラムハー郡
【2】総事業費:(直接事業費)420,732円+(管理費)37,778円=458,510円
【3】補助金助成金合計:0円
【4】派遣時期と派遣者名:
平成16年5月16日〜平成16年5月20日
小野 了代(
小野 修(専務理事)*A-1の事業と兼任
平成16年6月15日〜平成16年8月14日
重本 和宏(インターン)*A-1の事業と兼任
平井 寛(インターン)*A-1の事業と兼任
平成16年6月15日〜平成16年10月31日
太田 香織(インターン)*A-1の事業と兼任
平成16年8月13日〜平成16年10月9日
木透 洋子(インターン)*A-1の事業と兼任
【5】事業実施の経緯
ラムドン県ラムハー郡ダンフォン村では現在、少数山岳民族であるコーホー族369人と入植者であるキン族が4,387人、さらにクメール族25人、華人5人、その他の少数民族タイ族、ヌン族、モン族、ターイ族、トー族併せて43人が農業を生業として生活している。
ダンフォン村のコーホー族は、ベトナム戦争下の1963年に政府の政策により他地域への強制移住を余儀なくされ、苦汁を味わった経験を持つ。さらにダンフォン村を含むラムハー郡が政府により独立の行政区となったのは1987年で、財政基盤は非常に限られていたため、貧困者に対する支援はその後10年間一切なされなかった。ダンフォン村は1989年に帰還を許されたコーホー族28家族による一集落として設立された。1990年には政府の移民政策により北部から入植者が押し寄せて集落が1つ増え、現在は7集落によって構成される。政策による移住前、コーホー族は耕作期と休閑期に分け、広い土地を使用して焼畑耕作を行ってきたが、キン族の入植とベトナム政府による土地所有法によって、ベトナム語の理解が充分でなかったコーホー族は焼畑用の土地から追いやられた。現在コーホー族の人々は換金作物であるコーヒーやトウモロコシ、サツマイモを栽培しているが、定着型の農業技術に長けておらず、また機材や肥料の購入資金を持たないため、貧困から抜け出せずにいる。
1990年頃、多くの人々がマラリアによって死亡したとされているが、当時村に診療所はなく治療を受けることはできなかった。当会は1995年に簡易保健所を設置し、マラリア対策を中心とした2年に及ぶ医療活動を行い、その結果1997年には村内でマラリアに苦しむ人はほとんどいなくなった。しかし簡易保健所の規格はベトナム厚生省の基準を満たしていなかったため公認されず、現在は使用できない状態にある。
1999年に政府が建設した保健所は、地理的に第3集落に居住するキン族にしか対応できておらず、コーホー族の集落からは離れた位置にあるため、同じ村にあるとはいえ利用できずにいる。またラムハー郡の財政難により、保健所には診察に必要な医療機材もほとんどないため、診療所としては機能していない。そのため、保健所に医師がいても実質的には無医村であり、さらに資金不足のため増改築することもできず、新しい保健所の建設が必要とされている。
当会が2001年から始めた医療検診事業では、外科・内科・小児科・歯科の医師と医学生をチームとして派遣し、ダンフォン村第5集落のコーホー族を中心に村民の検診した。小児検診では、ほとんどの小児に成長障害が見られ、中には水頭症や心室中隔欠損と思われる小児もいたが、何の処置も受けられていない。また、寄生虫検査のため検便を実施した結果、感染率は約85%と非常に高かった。当会は14年に成長障害に加担する寄生虫と土壌との悪循環を断ち切り、小児の充分な成長を図ることを目的とし、し尿分離型トイレの建設を開始した。
近年政府の少数民族優遇政策により、医療診察と薬は無料で受けることができるようになった。しかし依然として病院までは徒歩で半日を要するため、バイク・タクシー等の移動手段を利用する経済力も持たないコーホー族の人々は、たとえ病気になったとしても充分な治療が受けられないのが現状である。当会が計画している保健所が建設されれば、今まで貧困によって医療処置を受けられなかった僻地山岳地帯に住む少数民族やその他ベトナム人が、常時医療サービスを受けることができるよう体制が可能となる。
【6】事業内容と成果
元来建設は平成15年度中に着工する予定であったが、現地人民委員会の要請により建設予定地が突然変更となったため、外務省日本NGO支援無償資金協力を得るため調整が再度必要とされる事態となり、平成16年度以降に持ち越しとなっていた。今年度は、ベトナム側の担当者の変更等があり再度の協議と情報の収集、見積りの取得に多大の時間を要し、残念ながら年度内に建設着工に至ることはできなかった。
【7】今後の展望と課題
残念ながら平成16年度中の建設実施はかなわなかったが、事業地変更や購入物に関する調整はすでに終了しており、現在は日本NGO支援無償資金協力の交付に向けて調整を続けている状態である。当会側の執行体制は全て整っているため、平成17年度に資金を得次第、スタッフ及び建築の専門家を派遣し、事業を実施する予定である。
B1.ヨルダン渓谷北部地域における住民参加型環境保全節水有機農法の普及と普及センターの確立<新規>
【1】 対象地区:ヨルダン・ハシェミット王国ジェラシュ県ジェラシュ地区及びブルマ地区、バルカ県南シューナ地区
【2】 総事業費:(直接事業費)34,977,118円+(管理費)3,140,640円=38,117,758円
【3】 委託金合計:29,952,803円(国際協力機構)
【4】 派遣時期と派遣者名:
平成16年4月〜平成17年3月
津田 加奈子(スタッフ)
大里 みのり(スタッフ)
平成16年5月22日〜平成16年6月5日
小野 了代(
小野 修 (専務理事)
西村 和雄(京都大学農学部・有機農法専門家)
平成16年12月3日〜平成16年12月24日
小野 了代(
小野 修 (専務理事)
平成16年12月5日〜平成16年12月18日
塚田 森生(三重大学生物資源学部・害虫対策専門家)
平成16年12月12日〜平成16年12月18日
片山 淳一郎(環境機器(株)、取締役社長・マーケティング専門家)
平成17年1月3日〜平成17年1月16日
西村 和雄(京都大学農学部・有機農法専門家)
上垣 敏明(兵庫県自然養鶏養蜂家・養鶏、養蜂専門家)
平成17年1月3日〜平成17年1月12日
小崎 隆 (京都大学農学部・土壌専門家)
【5】事業実施の経緯
平成15年7月に終了した開発パートナーシップ事業を引き継ぐ新たなパーマカルチャー事業となる「草の根パートナーシップ事業」は、平成15年10月にJICA(国際協力機構)より正式採択され、平成16年3月10日に無事国際約束が締結された。同年4月7日にはJICA・農業省・当会間の三者事業実施契約が現地にて交わされ、日本側でもJICAと当会の事業委託契約書が交わされ、正式に事業が開始された。今回はアンマンから30km北方に位置するジェラシュ県ジェラシュ地区及びブルマ地区にて事業を実施する他、前回のバルカ県南シューナ地区においてもモニタリングを継続して行うことが事業内容に盛り込まれた。新規カウンターパートはヨルダン政府農業省植物生産課有機農業係(オーガニックユニット)である。契約期間は平成16年4月から平成19年3月までの予定である。
当会は環境保全と持続可能な農業を両立させるパーマカルチャー方式の導入を行い、農業省内人材育成や貧困農民へ新たなる収入創出の道作りを補助する事を目的として本事業を実施している。
【6】事業内容と成果
1. ブルマ地区に位置する農業省のモデルファーム(2.1ha)をパーマカルチャー手法に基づいて整備し、さらに研修センターの改築を行った。
@ 実施地域の等高線の計測及びゾーン分け。
A 277本のオリーブの木にウォーターキャッチメントのための石垣づくり実施。
B 555本のマメ科及び忌避植物(ニーム)を植樹(ミックスプランティング)実施。
C 廃材であるオリーブ油粕を利用した堆肥作り実施。
D 排水利用システム導入。
E PC研修センター改修工事完了。
2.ブルマ地区のモデル農家と協調してワークショップを開催し、近隣農家へのパーマカルチャーの普及活動を行った。
@ 2件の協力農家と技術移転開始
A 農家宅にて毎月ワークショップを開催(平成16年度は計9回)。
B 日本へのマーケティングサンプル用オリーブ油づくり実施。
C 2つの協同組合組織結成(計14農家が参画)
3. 農業省の技官に対する技術移転を行い、人材育成を図った。
@ カウンターパートへのOJT的技術移転。
A 農業省技官向けのトレーニングコース実施。
B 日本人専門家による指導実施。
C 有機農法制度化への組織作り開始。
4.当会が2000年から3年間に渡って活動した南シューナ地区における住民達の活動を支援した。
@ PCモデルファームへ農業省技官と共に定期モニタリングと指導を行う。
A ローカルNGO「アル・ジャワースレ」女性グループと「有精卵プロジェクト」開始。
5. その他の特記事項は以下の通りである。
@ 土壌分析、オリーブ品質分析、養鶏用発酵飼料分析など、ベースラインデータ取得。
A 車両、事務機器、トラクター、木材粉砕機などの資機材の手配完了。
【7】 今後の展望と課題
3年間にわたる事業活動計画のうち、第1年目で70%以上をほぼ達成したと言えるが、今後はさらに細かいケアを、時間をかけて行う必要がある。
以下の3点を今後の重点目標とする。
1. マーケティング(エクストラ・ヴァージン・オリーブオイル、健康で安全な有精卵、無添加の蜂蜜)
現在ヨルダン国内で「オーガニック(有機)」に関してはまだ一般的に認知度が低いが、ジェラシュ周辺のほとんどがオリーブ農園農家であることから、今後、汎用性も高く今後の輸出の可能性にも大きくかかわるオーガニックオリーブ生産に、農業省はてこ入れを行いたいと考えており、当会はその要請にこたえるべくそのための素地作りに協力する方針である。価格破壊のために経済的に苦しい零細農家のために、オリーブオイルを適正価格で販売しその評価と収入が零細農家に還元されるような商業システムをヨルダンに構築し、ローマ時代から愛されてきた本物の味と伝統を後世に伝えていく事を目指して行く。
また、「有精卵」と「蜂蜜」に関しては、すでに認知度も需要も高く、地方の無添加食品には付加価値価格をつけることが可能なため、主にヨルダン国内でのマーケットの開拓の補助を行い、確実に貧困農家および女性グループの家計の改善を実感できる結果を残すことを期待している。
平成17年度に予定されている出張者(有機認証専門家2名)により、ヨルダン国内における有機認証制度の確立について農業省と模索することとする。また、ヨルダン国内における有機農法に関与する機関や人物とも意見交換を行うことを予定している。近い将来、ヨルダン国内に有機認証団体が設立される事を見据えての、第一歩となる。
農業省の所有する農業試験場内に設けた「パーマカルチャーモデルファーム」にて、地域農民がそこで講習を受け、デモンストレーションを体験し、パーマカルチャー方式の更なる普及活動を実施する。協同組合ミーティングの数を重ねて、組織的に利益を追求し、利益を分割することや、リスクを分散させることにより個別に行うよりも有利であるということを体験に基づいて理解してもらうように取り組みたい。会議のファシリテートは適宜行い、キャパシティビルディングのためのフォーマットなどはこちらが用意するが、あくまでも住民組織、またそのリーダーを主体に自立発展していくような道作りを行いたい。その他、地域貧困農民にはオリーブ油、養蜂・養鶏事業を通じてそれぞれの商品マーケティングのためにコミュニティにシステムを作り、具体的な自立への道を促すこととする。
C1.教育環境整備事業(ヘラート州ヘラート市)<継続>
【1】対象地区:アフガニスタン・イスラム共和国へラート州へラート市
ハジェ・モハマッド・タキ校(生徒数3,700人)
【2】総事業費:(直接事業費)218,584円+(管理費)19,627円=238,211円
【3】補助金・助成金合計:4,250,000円(チャリティ・オークション実行員会(4,000,000円は平成17年度への引当金に充当)
【4】派遣時期と派遣者名
平成15年11月22日〜平成16年4月14日
村上 祥隆 (スタッフ)*C-2、D-1、D-2の事業と兼任
平成16年3月14日〜平成17年3月5日、平成17年3月29日〜現在
佐藤 智子 (スタッフ)*C-2、D-1の事業と兼任