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                                  【イラク避難民人道支援事業】    
   【概要】
・目的:イラク、ヨルダンの両国の子どもを対象とした心理社会的ケア、イラク避難民およびヨルダン人貧困世帯への
食糧配布
・期間 :2007年11月2日〜2008年4月1日、2008年4月2日〜2008年10月8日(第2期)
・対象者:ヨルダン人とイラク避難民の小学5年生、イラク避難民およびヨルダン人の貧困世帯
・事業委託団体・助成団体:(特活)ジャパン・プラットフォームUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)
 
【背景・目的】
 2003年のフセイン政権崩壊以降、激化する戦闘と治安の悪化により、ヨルダンに避難しているイラク人は50〜75万人上ると言われています。イラク避難民の多くは労働許可を持たず、職を得る事ができないため、最低限の生活費すら賄えない状況にあります。また、イラク人の多くは家族や親戚が殺害や誘拐等の被害に遭った経験から不安を抱えており、心理的側面での支援を必要としています。さらに、イラク避難民とヨルダン人間の葛藤が生じることも懸念されています。そこで、NICCOはイラク避難民に対して、下記の支援活動を行います。

1)心理社会的ケア: イラク、ヨルダンの両国の子どもを対象に心理社会的ケアを行い、イラク避難民特有の心理的問題に対応しつつ、ヨルダン人とイラク人の相互理解に資するよう心理的側面からサポートします。


2)食料の配布: 現在ヨルダン人コミュニティから切り離され、公的な支援を受けることができないイラク人の貧困世帯およびヨルダン人貧困世帯に最低限の生活を保障するため、食料配布を行います。

                                           
 

報告対象期間:2008年2月3日(日)〜2008年2月9日(土)

1.対象期間中の活動状況
(1)成果
・第二回心理社会的ケアワークショップ(描画セッション第一回実施)
描画セッションとして、「私の家族」「戦争と平和」の描画を行った。家族の肖像を完全に二次元的なものとして捉えている児童が多く、非常に高い類似性が見られた。特に左右隣の子どもや兄弟と全く同じような絵を描く場合が非常に多く見られる。

NICCOスーパーバイザーであり精神科医の桑山紀彦医師によるワークショップが、2月5〜7日まで開催された。
描画セッションにおいては、戦争を描画した紙に対して、児童らが色塗りを行った。一人のイラク人児童は、戦車の発砲部分を「緑色の樹木」として捉えて緑色に塗った。同児童は数年前にイラクから避難しており、戦争については思い出したくないと語った。従って同児童にとっては、戦争は現実から押しやられた遠いイメージのもので、平和の空間を夢想している傾向があると思われる。また、空一面を黒く斜線で塗りつぶす児童も複数見られた。
続いて、複数の図形が描画された紙に対する「塗り絵」を行った。凹凸線に対しては寒色系を、なだらかな曲線に対しては暖色を使用するのが、心理的に健康な児童の傾向といえるが、中には「濃い紫」等、特異な色で塗りつぶす児童や、暖色であるべき部分を黒に塗りつぶす児童がおり、ストレスに非常に弱い等、注意を要する心理状態が観察された。同描画は、想像力を駆使することで、単なる図形線を、「山」「太陽」「星」等に見立てる力を考察していくためのものである。
描画後に各児童が発表を行い、桑山医師より、「絵の中に自分は存在しているか」との問いかけが行われた。自己の姿を絵の中に配置している場合は、平和や戦争等の描画内容を現実のものとして捉えているといえるが、そうでない場合は、戦争等があくまで「人ごと」として認識されている可能性がある。さらに、「絵の中に、自分を追加するとすれば、どこに描くか」との質問に対して、一人の児童は曲線を虹に見立て、虹の上で縄跳びを飛んでいる様を描き、同医師から「夢と希望がある」との評価を頂いた。
さらに、ワークショップ後の振り返りのセッションとして、同医師より、「各児童に対して、的確な問いかけを行い、心の声を聞き、また問いかけをするという
過程を経て、評価を行い、子どもらが物語りを形作ることができるようになることで、心の傷跡を乗り越えいくことが肝要である。」等のコメントを頂いた。

6日のクレイモデルセッションでは、50cmのワイヤーと4色の粘土を使用して、人生の軌跡をワイヤーにて表現する「ワイヤリング ライン」に取り組んだ。例えば、イラク避難民の兄弟は、先端を白の粘土で被い、雪の日に生まれたことを表現、続いてワイヤーの曲線を下降させて赤い粘土を付着させ、幼少時に手術を受けた様を表現した。その後、イラクからヨルダンへと避難し、祖母が亡くなり、現在はNICCOのワークショップに通うことができて幸せだという様を、短いワイヤーを幾度にも折り曲げて表現した。別のイラク人姉妹は、戦争に関する記憶は一切粘土に表現せず、「なぜ戦争に関する表現はないのか」との問いかけに関して、妹は「覚えていない」と答え、姉は「思い出したくない」と答えた。幸せに関する出来事を表現する場合は、白・緑・黄・薄桃色のを使用する場合が多く、衝撃的なことに関しては赤や黒を使うケースが多く見られた。

さらに、7日にはUNHCRとの合同事業として、アンマンのアル・フセイン文化センターにて、桑山医師のセミナーが開催され、日本大使館の杉野氏他、約25名の参加者およびNICCOスタッフ計約40名が参加した。参加者の大部分は国際NGOに従事するソーシャル・ケース・ワーカー、心理学者等であった。ほぼ3時間半に渡り、PTSD(Post Traumatic Stress disorder)に関する詳細と、心理社会的ケアの実践的手法の紹介が行われた。参加者の中の二人はイラク人で共に国際NGOに従事しており、トラウマケアの実践的技法を紹介した今回のセミナーは非常に貴重であると発言した。参加者全体から、今後も継続的に心理社会的ケアに関するセミナーを開催してほしいという強い要望が寄せられた。

2月 4日(月)
場所:NICCOワークショップセンター
時間:9:30〜11:00
受講者:ヨルダン人11名、イラク人9名、エジプト人1名、計21名(Cグループ)

2月 5日(火)
場所:NICCOワークショップセンター
時間:9:30〜11:00
受講者:ヨルダン人5名、イラク人3名、計8名(Aグループ)

2月5日(火)
場所:NICCOワークショップセンター
時間:14:30〜16:30
受講者:ヨルダン人8名、イラク人4名、計12名(Bグループ)

2月 6日(水)
場所:NICCOワークショップセンター
時間:14:30〜16:30
受講者:ヨルダン人9名、イラク人5名、エジプト人1名、計15名(Cグループ)

2月7日(木)
場所:アル・ホセイン文化センター(アンマン)
時間:12:00〜16:00
受講者:参加者計40名

2月 9日(土)
場所:NICCOワークショップセンター
時間:9:30〜11:00
受講者:ヨルダン人8名、イラク人3名、計11名(Aグループ)

2月 9日(土)
場所:NICCOワークショップセンター
時間:14:30〜16:30
受講者:ヨルダン人9名、イラク人5名、エジプト人1名、計15名(Cグループ)

2. 事業実施をめぐる環境の変化
(1)政治・社会状況の変化
特になし。

(2)環境変化による事業への影響
特になし。

(3)広報
2月7日の桑山医師によるセミナーにおいて、Al Rai新聞記者の訪問があった。

(4)その他
1月よりUNHCRとのIP契約による事業として、上記のJPF資金による心理社会的ケアプログラムと補完関係にある第2プログラムを展開しており、1月29日にオリエンテーションを実施、2月2日よりドラマワークショップを開始した。参加者のうち、子どもらの大部分はJPF事業における第一プログラムの卒業者である。現在、参加者数の総計は約64人(うちイラク避難民26名)で、ドラマグループの参加者らは、ドラマの理論、即興演劇、エチュード、身体表現等のカリキュラムに取り組んでいる。ダンスグループに関しては伝統舞踊ダブケの理論と稽古を実施している。

    
              描画セッションの様子

    

   
          バウムテストにて描かれた木
葉のある木を描く児童は少なく、実が少しだけついた りんごやオリーブの木を描く子どもが大半。



    
    
NICCOスタッフ笠田(中央左)、デンディ(中央右)と子どもたち

       


描画セッションにて描かれた「怒りのイメージ」「戦争と平和のイメージ」

 

 


 


 その他の活動報告はこちら 

<2007年12月>

<2008年1月>

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